2018年6月6日
東京画廊社長の山本さんの講演会
『アートの経済学』に行ってきました。

山本豊津(やまもと・ほづ)/東京画廊社長
1948年東京都生まれ。71年武蔵野美術大学造形学部建築学科卒業。元大蔵大臣村山達雄秘書。2014年より4年連続でアート・バーゼルへ出展。アートフェア東京のコミッティー、全銀座会の催事委員を務め、多くのプロジェクトを手がける。現在、東京画廊社長。全国美術商連合会常務理事。著書に『アートは資本主義の行方を予言する』、『コレクションと資本主義』(水野和夫氏との共著)。 Newspicksより引用
大変興味深い内容だったので
印象に残った部分を書き残していきます。
さっと読むための目次
アートは何を根拠に評価されるのか
そもそも芸術品・アートは何を根拠に評価されるのかというお話で3つの軸が出てきました。
・アートの歴史の先端に立ったかどうか
・制作されてからの時間の経過
・社会的インフラが充実しているか
これだけだと訳がわかりませんね。
1つずつ解説していきます。
歴史の先端に立ったかどうか
芸術とは人類の歴史の積み重ねでもあります。
アートは過去の美術史の更新にこそ、価値があると言えるでしょう。
写実主義への反発で印象派が生まれたように、それまでの美術史を更新したものに大きな価値があります。
ちなみにモネやセザンヌに代表される印象派という名前はモネの作品『印象・日の出』から名付けられたそうです。
美術史の更新は必ずしも過去の系譜を踏襲するだけではなく、今までにない全く別の概念を作ることも更新と言えるようですね。
制作されてからの時間経過
美術品は制作されて時間が経過しているものほど評価は得やすいようです。
まぁ昔に作られたものほど、保存の問題や、紛失・盗難の問題があるでしょうから当然といば当然のように思います。
ただ、山本さんのお話で面白いアーティストのお話がここで出てきました。
そのアーティストは『木に釘を打ち付ける』という技法だけでアート作品を制作していたそうです。
そのアーティストが木に4本釘を打った作品は現在100万円の値がついています。
なぜそのアート作品にそこまでの値がついているかというと
彼は50年前からずっと同じ技法で作品を制作し続けていたという点が評価されているからだそうです。
にわかには信じられませんね。
社会的インフラが充実しているか
こちらは資本主義に基づいて評価される根拠です。
そもそもアート作品はある種の資産として見られてきました。
こちらの絵画はダヴィンチが描いた『サルバドール・ムンディ』という作品です。
この絵画はニューヨークのオークションで約508億円という価格で落札されました!
約10トンの純金と同程度の価値だそうです。
絵画は『手で持てる世界最大の資産』とも言われているそうですが、納得です。
10トンの純金は持てませんからね。
ただこの資産価値も流通する社会インフラがなければ意味を持ちません。
アーティスト⇨画廊⇨アートフェア⇨購入者⇨オークション⇨美術館
アートが『商品』として流通する市場がなければ
そもそもアートにお金に換算できる価値がつかないというのには驚きました。
ある一時期美術史の先端に立ち、長年保存され、市場の流通にのった作品
法人がアートを所有すること
アート作品を集める法人が多いのは何故かという話題がありました。
山本さん曰く、
「『法人』とは法律で認められてた人格であるから、ある意味『永遠の命』を持った存在、人間より寿命の長い『アート』を『法人』が保有するのは当然の流れ。」
突拍子も無いように聞こえますが、面白い観点だと感じます。
また法人の業種ごとにも集めるアート作品には傾向があるという話も
製造業の人は現代アートを買う。新しい発想を得るため。
流通業の人はポップアートを買う。大衆が社会を動かしていることを前提としているから。
金融業の人は、すでに価値の定まったセザンヌとかを買う。資産を増やすため。
— Akiko Yamaguchi (@akikoyamag) 2018年6月6日
これは結構納得できます、特に最後の金融業のところは特に(笑)
資産としてアート作品を収集する企業もあるでしょうが、このような傾向は面白いですね。
個人がアートを所有すること
講演では、個人がアートを所有する意義についても言及されました。
山本さんは、個人には3つの時間があると話しました。
『自分の時間』
(生まれてから死ぬまでの時間)
『社会の時間』
(学校や会社などの時間)
『歴史の時間』
(過去から未来に伝わる時間)
自分と社会の時間はなんとなく分かりますが、歴史の時間が少し分かりづらいですね。
しかし、この『歴史の時間』こそアートを持つ意義と関わってきます。
アートには代々のコレクターの名前がついて回るそうです。
例えば『これはかつて織田信長がコレクションしていた茶器です。』といった具合に伝わる茶器があれば
信長の次は秀吉に、秀吉の次は徳川へ
どんなコレクター達を経由して現代に残ったかが記録されますよね。
個人がアートを所有する意義はまさに
『歴史に名を刻む』
ことにあると山本さんは述べます。
資産としてアートを所有するに留まらず、アートを後世まで伝わる『歴史』だと捉えて名前を残すという発想には驚かされました。
私も何かしらのアート作品を買って、家に飾ろうと思います。